人が亡くなると同時に相続という法的な事象が生じます、その相続についてのおはなし。
失踪宣言には二種類ある
失踪宣言には普通失踪宣言と危難失踪宣言の二種類があるんですが、今回は危難失踪宣言について書いていこうと思います。その前に
失踪とは?
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が明らかでない者。
いわゆる行方不明者ってことですねん、語弊があるかもしれんけど軽い感じで言う行方不明(飛んだわとか家出したわ)と違って重い感じで言う行方不明(消息不明)の方です。
失踪宣言とは?
失踪宣告とは、生死不明の者に対して法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度。
申立てにより家庭裁判所は失踪宣言をすることができます。申告制って事な、自己申告は無理やけど(笑)
人間の生物的な死を判定できるのは医師でありそれを行うには当然やけど当人の身体が要ります、せやけど当人がいない失踪状態では身体が無いため判定でけへん。
なので失踪してから生死不明な状態が一定期間あれば失踪宣言を行い法律上は死亡したものとみなして相続がおこなわれるってことですわ。
例えば本能寺の変で討たれたとされる織田信長やけど、本能寺に火を放って自刃したとなってるだけで織田信長の遺体はおろか骨も見つかってへんらしいから要は失踪ってことやん!せやけど仮にそん時に亡くなってないかもしれんとしても400年以上も前の人間が現在まだ生きてるかもしれんってならんわな、それに近い感じやな。知らんけど。
本題の危難失踪宣言とは
戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないとき
民法第30条2より
民法では危難失踪宣言をこのように定めてます。
どういう事かって言うたら戦争や船舶の沈没事故、地震などの災害によって失踪した場合、その危難により死亡している可能性が高いため危難が去った後1年間生存が確認できなければ死亡したとみなし失踪宣言をするということ。
行方不明の期間がたった1年間で死亡扱いって気ぃ早ない?って思うかもしれへんけど、危難の内容を鑑みるとそうなってしまうんやろ。
この危難失踪宣言は【いつ死亡したとみなすか】というと過去にさかのぼって
危難が去った時に死亡したものとみなす
と民法第31条になってます。
どういうことかというとまた語弊があるかもしれんけど『危難が去った1年後に「去った時を死亡日にしますわ」』って言うてくるって事です。そやから相続が発生したのは危難が去った日とするってこと。
ここは普通失踪宣言と違うところですねん。覚えといてや!
相続の話で失踪宣言を書くのに通常失踪宣言からではなく、何故先に危難失踪宣言を書いているかというと、北海道の知床半島沖で観光船沈没事故が起こり乗員乗客全員が行方不明もしくは遺体となって見つかる痛ましい大事故が起こったからです。
事故の要因や責任問題については言及しませんが、この事故やとおそらく普通失踪宣言ではなく危難失踪宣言に該当するんやと思います。
そうだとしても遺体が見つかり死亡が確定するのと『失踪宣言で死亡とみなす』のに1年間かかるのではお身内の生活に大きく影響が出ます。
もしいわゆる一家の大黒柱の方が被害者の中におり『死亡』となれば死亡保険金などといったものが速やかに支払われると思いますが、『行方不明=失踪』という事はもちろん生存している可能性もあるので危難失踪宣言を申し立てられるまでの1年間は保険金などの支払いは行われず、大黒柱を失った家庭には経済的にとても厳しいものになります。
そのようなこと以上に残念ながらご遺体となられてでも帰ってくるのと行方不明のまま帰ってこないのとではお身内の心情は言うまでもない事ですが。